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台風の夜、愛犬教えてくれたこと

段々と秋めいてきまして、運動(スポーツ)の秋となりました。9月~10月にはあちらこちらで小学校や地域で運動会が開かれます。この時期になると思い出すのは、数年前に甥っ子の運動会があり応援に誘われていました。ところが、その頃ちょうど台風が近づいており、開催できるのか心配されていました。それでも何とか天気は持ちそうで、台風が最も近づくのは翌日との予報でした。当日の朝、甥っ子の応援に出掛ける準備をし、「さあ、行こう」となったところで、愛犬の柴犬「テツ」に「じゃあ、行ってくるね」と声を掛けようと犬小屋を覗きました。

ところが、テツの姿がありません。

首輪を付けたまま、どこかへ離れてしまっていたのです。これまでにもテツが離れてしまったことはありましたが、いつも1時間ほどすると自分から戻ってきていました。「今回もそのうち帰ってくるだろう」と思いたい気持ちもありましたが、何となく嫌な予感がしました。それからは、もう運動会どころではありません。自転車や車で近所を探し回りました。区長さんにも事情を話し、区の放送で情報提供を呼びかけてもらいました。思い当たる場所にも問い合わせましたが、目撃情報はありません。時間だけが過ぎ、やがて日が暮れてきました。

テツは15歳になる高齢犬です。しかも、翌日には台風が最接近する予報。夜になると雨も降り始めました。「大丈夫だろうか」「どこかで雨宿りしているだろうか」そんなことばかり考えてしまい、心配でなかなか落ち着きませんでした。翌日は朝から激しい雨。それでも何とか見つけてあげたいと、雨の中を探し続け、範囲を広げてあちこち探しましたが、手掛かりはありません。風雨は次第に強くなり、台風はまさにピークを迎えようとしていました。

そして午後9時頃、突然、電話が鳴りました。電話の向こうから、市役所の建設課の方が、「お宅の犬、離れていますか?」と尋ねてきました。続いて、「水路の中で犬の鳴き声がすると市に連絡があり、保護しています」とのことでした。テツの首輪には電話番号を付けてあり、それを見て連絡をくださったのです。すぐに迎えに行きました。そこには、雨に濡れ、衰弱してぐったりとしているテツがいました。

どうやら家のすぐ脇の水路に入り、そのまま下流へ下流へと下って行ってしまったようです。市役所の方に何度もお礼を伝え、テツを抱きかかえて家へ連れて帰りました。身体は冷え切っていて、容体も良くありませんでした。身体を拭き、毛布などで温めてあげると、少しずつ元気を取り戻していきました。やがて水も飲めるようになり、食事も取れるようになり、本当にほっとしました。

翌日、テツが見つかった場所を見に行ってみました。そこは家から下流へ約500メートルほど離れた場所で、水路の高さは人の背丈ほどもある深い水路でした。「こんなところに、台風の激しい雨の中、一日以上もいたのか」と思うと、無事に見つかった喜びとともに、もっと早く見つけてあげられなかったことが申し訳なく思えてきました。それでも、あの激しい風雨の中でテツを見つけてくださった方、そして首輪の電話番号を頼りに連絡をくださった市役所の方には、本当に感謝しています。あの日のことを思い返すと、テツが無事に帰ってきたことはもちろんですが、困っている時に声を掛け、力を貸してくださる地域の方々の温かさを改めて感じます。

「犬がいなくなった」という小さな出来事でしたが、区の放送で呼びかけてくださった方、心配し一緒に探してくださった方、そして最後にテツを見つけてくださった方。たくさんの人の温かい気持ちに支えられて、テツは我が家に帰ってくることができました。運動会の季節になると、今でもあの日のことを思い出します。そして、台風の雨の中、家に戻ってきたテツの姿を見るたびに、「よく頑張ったね。帰ってきてくれてありがとう」と声を掛けたことを思い出します。

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